『Vildspor』の苦しむニコライさん(と必死に家庭を守ろうとするマッツ)


1年以上前に観てマッツ鑑賞会でも見たのですが、思い入れが強くてなかなかちゃんとレビューをまとめきれていなかった『Vildspor (Wildside)』についてまとめます。マッツがというよりニコライさん、作品全体がとても好きな作品です。

以下、最下部の「■ネタバレ感想」以外はネタバレなしのつもりです。


■作品概要
アイスランドで妻と幼い息子と暮らすJimmy(ジミー; マッツ・ミケルセン)のもとに、突然旧友のOssy(オッシー; ニコライ・コスター=ワルドー)が派手な格好で現れる。Ossyを家庭から遠ざけたいJimmyだが、Ossyが自宅に来てしまい、色々な誤解が重なって二人ともに苦境に陥ってしまう。その後それぞれなんとか乗り越えようとするが、最後にOssyが訪れた理由が分かって…。

■感想
・作品全体について
2度目に見返すと全く違って見えるいい作品。アイスランドの冷たく乾いた景色も美しく、音楽も素敵です。ニコライさんはカッコよく、マッツはいっぱいいっぱいな普通の男性になっていました。伏線が大量に埋め込まれてるので時間を置いて「あれはつまりそういうことでは?!(´;ω;`)」となるシーンがかなりあり、何度見てもグッとくる良作です。

・マッツについて
マッツは本当に普通の男性になっていました。家庭を守ろうといっぱいいっぱいで、かわいそ可愛いシーンもあり。。涙ぐむべきなのか笑うべきなのかほっこりすべきなのか本当に分からないシーンがありました。
特典のマッツ不機嫌インタビューですが、あれは監督さんがジャーナリストに扮してわざと撮ったものだそうです。あの不機嫌さもジョークの様子。

 
■買い方
ebayでも出品は見かけたことないので、デンマークの中古品を探すしかなさそうです。尚、DVDにはあの『Nu』も特典映像として入っているので、見かけたら購入するのおすすめです!
*リージョンフリープレーヤーをお持ちでない方は購入しても見れません。

 
■ネタバレ感想
以下がっつりネタバレ書くのでご注意ください。

・伏線まとめ(Ossyを想いながら泣く項目リスト)
– 最初の空からの眺めは最後の空からの眺めかもしれない。
– 「おうちに帰りなww」と言われてすごすごと去っていくOssyは乱暴なタイプじゃないって分かる。
– 年上女性を口説いておきながら最後に結局蹴飛ばしたのは、伝染してしまうことへの罪悪感がやはり強すぎてだったのかもしれない。
– おじいちゃん死んじゃったのは一酸化中毒とかかもしれない。おじいちゃんが乗ったときは窓を閉め切っていた。Ossyが乗ったときは窓を開けていてそれでもあくびをしていた。あくびのシーンをわざと撮るってそういうことじゃないかな。そしてもし本当にそうなら、自分がすることが裏目に出ると言っていたOssyの報われなさが辛いし、最後にその飛行機に乗ったOssyがどういう最期を計画していたのが分かってしまう。。満足したら窓を閉めれば、さほど苦しくなく死ねる。。
– Ossyはおじいさんのへそくりをマフィアに渡したけど、多分マフィアはJimmyからも知らぬふりでお金搾り取るんだろう。。
– 飛行機で巡ったのは大好きな人たちゆかりの場所ばかり。Jimmyが「俺の場所だ」って言った崖とか。

・誰にも言わなかったけど最後に「9年って大した時間じゃないのかな」ってあの女性(Jónaさん)にこぼしてるOssy辛い。辛い。

・Jimmyに最後に言えて分かってもらえたけど、そこで号泣し合うでもなくぎゅっと抱きしめて最期の別れをするのも辛い。JimmyはまさかOssyがあんな最期を選ぶとは思ってないだろうし、もし万一知ったらどう思うんだろう。。後悔することはないかもしれないけど、それでもずっと何か考えずにはいられないだろうし、そうであって欲しい。

・JónaさんはOssyの選択を理解して受け入れてくれる気もするけど、でもそれも辛い。

・特典映像でニコライさんと奥様でありJóna役であるNukâkaさんが仲睦まじくしているのが、ほんと慰めになりました。

・この記事を書いた2019/4/12、デンマークの雑誌EUROMANのTwitterアカウントに下記投稿がありました。今度の号で表紙を飾るニコライさんが、先日表紙を飾ったマッツにちゅーしてる写真!これOssyとJimmyで考えると切なくなるやつです。うう。


・最後の曲はこちら。素敵です。飛行機に乗っているときに思い浮かんだ曲とのこと。
歌詞の和訳はこんな感じです。直訳気味なのでちょっとあれですが。

“Doubled Up” (膨らんだ [“倍増した”がより直訳ですが違和感ひどいので以下こう訳しています])

I saw a mountain from higher above
(はるか上空から山を見た)
I held your hand and I was doubled up in love
(私はあなたの手を握っていて、私は愛で膨らんだ)

Big sky above me, a river inside me
(私の上には大きな空。私の中にはひとつの川)
And I’m doubled up in love
(そして私は愛で膨らむ)

You’re watching your step but you fall as you’re walking
(足元を見ているけど、でも歩いていると落ちてしまう)
You take it in stride but still you fall as you’re walking
(一歩踏み出すけど、でも歩いているとまだ落ちてしまう)

Big sky above me, a river inside me
(私の上には大きな空。私の中にはひとつの川)
And I’m doubled up in love
(そして私は愛で膨らむ)

Feels good, it feels like poetry
(いい気持ち。詩のような感じ)
Don’t ask me to explain it
(それを説明しろなんて言わないで)
Just feels good, like poetry
(ただ、いい気持ち。詩のように)
I’m doubled up again
(私はまた膨らむ)

Look at the sky
(空を見上げて)
Lift off like an aeroplane
(飛行機のように飛び立って)
Watch the ground come up to meet you
(地面が自分に会おうと近づくのを見て)

Big sky above me, a river inside me
(私の上に大きな空。私の中にはひとつの川)
And I’m doubled up in love
(そして私は愛の中で膨らむ)

Ossyが最後に空で思っていたことのようにも思えてまたグッと来ます。


 
辛いしか言ってない。。でも本当にストーリーよくできてるし風景も美しいし心も痛いし素敵な作品です。

以上です。