MR POTERインタビュー(2019/2)


ラグジュアリーブランド通販会社であるMR PORTERさんがマッツのインタビューと素晴らしい写真を何枚も✨掲載してくれました。ので早速和訳します!珍しく読書についての話がありますよ。

素晴らしい写真はリンク先の記事でたくさん見れるので行ってみてくださいね。最下部にインスタ投稿分は貼っておきます。

いつものように和訳は直訳気味、固有名詞の和訳は適当、[ ]は私の補足です。この和訳で知った内容をSNSで呟いたりする際は必ずソースを明記してください。


Source: MR PORTER

マッツ・ミケルセンというPolar[極端]な存在

そのデンマーク人俳優が、USでの大ブレイク、北極圏での映画撮影、そしてブルース・リー氏のように着飾ることについて語る

 
マッツ・ミケルセン氏に会うまで、私は彼がどのような人物なのかについて、あるビジョンを持っていた。その53歳の俳優は北欧の犯罪小説を読んでいるだろう、と思っていた。何か暗くて複雑に絡み合っていて、冬の季節に[事件が]起きて、雪の白さがその人殺しの心の闇とぶつかり合うような。多分彼はタバコを吸ってるだろう。あるいは、少なくとも彼は良質のタバコとシェービング後のシトラスの香りがするだろう。私は、彼は全身真っ黒な服を着てるに違いないと思っていた。

ここは、私があなたに”本当のミケルセン氏は「デンマークで最もセクシーな男」に繰り返し選ばれるような、刻まれた皺が魅力的でハンサムな一匹狼とはまったく違う”と言って、あなたの予想を裏切ると思われている場所だ。私は、彼がシャイだとか、挙動が変だとか、スクリーンで見せるほどの氷のような威圧感はないとか、言うものと思われている。でも私にはできない。私がニューヨークのChelsea Piersにある空気感のある撮影スタジオの中でミケルセン氏に会ったとき、彼は犯罪小説を読んでいて、確かにニコチンの匂いがした。事実、彼は外に抜け出してタバコを吸うために、私たちのインタビューを5分間遅らせた。彼が出て行っているあいだ、彼は読んでいた本を置いて行っていた。分厚い、大衆市場向けの普通の小説[potboiler]。表紙には凍った風景。人々が空港で手にとってホテルの部屋に置いていくような北欧の微妙な本[Nordic pulp]。

彼がタバコ休憩から、頭からつま先まで黒で(黒のスキニージーンズ、黒のアンクルブーツ、首にファスナーのあるなめらかな黒いセーター)戻ってきたとき、私は彼に映画の役の準備のためにミステリーを読んでるのかと尋ねた。「いやいや、そんなんじゃないよ」と彼は言った。「僕はただその言語をキープするために読もうとしてるんだ。僕は基本的に僕が読めるすべての英語のもの、少なくとも簡単なものは読むんだ。飛行機の中でも、車の中でも。最後に何が起きるのか知ってるけど、誰がそれをしたのかまだ興味があるんだ」。

ミケルセン氏は、まるで英語が堪能でないかのように言った。それは違う。彼は美しく話す人であり、多弁で、ひょうきんだ。彼は話す前に止まり、そして文章を一気に話しだす。まるで彼の考えについていこうとしているかのように。彼はよく文章を区切る。彼の曲がった歯[crooked bicuspids]がちょっと見えるやんちゃな笑みを浮かべて。彼は、主にスラングを知るために小説を勉強するのが好きだと言う。彼は大半の時間を、故郷デンマークの都心であるコペンハーゲンで過ごす。そこでは、彼は妻である振付師のハンネ・ヤコブセンさんと暮らしており、彼は2人の子供、現在26歳と21歳であるヴィオラさんとカールさんをそこで育てた。彼は自身の仕事を、デンマークでの映画製作とUSでの映画製作とで綺麗に均等に分けているが、今も昔もいつも英語の口語[colloquialisms; スラングというより”日常語”]を磨き上げる必要があると思っている。彼はいまだにアメリカの訛りをマスターできていない。というか、彼自身のハスキーで強い訛り以外の訛りはマスターできていない。「僕は完全なアメリカ人や完全な英国人は演じたことがない」と彼はいう。「僕はいつも外国人を演じている。面白い名前のエキサイティングな奴を」。

それは事実だ。USでは、引き締まった体躯や緩く波打つ[flop; floppy fringe]銀髪をもつミケルセン氏は、冷酷な欧州の悪役や、毛皮を着た皺の深い賢者としてよく型に嵌ったキャスティングをされる。彼は数々の超大作に潜み込み、その際立った頬骨と世界的な気骨のある雰囲気[vague air of worldly grit]をそれらの作品に貸す、完成されたキャラクター俳優である。『カジノ・ロワイヤル』では、彼は国際的なテロリストで目から血を流すレアな症状を持つジェームズ・ボンドの仇敵ル・シッフルを演じた。『ドクター・ストレンジ』では、彼は不死になろうと挑戦する神秘的なアンチヒーローであるカエシリウスを演じた。2年のあいだ、彼はタイトルにもなっている知識豊かな人食いを、ハンニバル・レクターについてのNBCドラマである『ハンニバル』で演じた。『ローグ・ワン』では、彼はより柔和で、しかしそれでもエキセントリックな役を演じた。それはエレガントな科学者であるゲイレン・アーソ。彼は、デススターが自己破壊するよう密かに計画し、そしてレジスタンスのために働く中で死んだ。

彼の母国デンマークでは、ミケルセン氏の仕事の主軸はずっともっとアバンギャルドなものだ。彼は1965年にコペンハーゲンに生まれ、マーティン・スコセッシ氏(『キング・オブ・コメディ』が彼の好きな作品だ)の映画に憧れながら[idolising; アイドル視しながら]育った。彼は20代で俳優として働き始めた[?本当は30代ですよね]。その頃、とあるデンマークの新進気鋭の若いフィルムメーカー達のグループは、骨太で新しいデンマーク映画のスタイルを作ろうと心に決めていた。「1990年代から2000年代初期のそのうねりを抑えるのは難しかった」と彼はデンマークの映画産業についてそう語る。「そこにはThomas Vinterbergが、そして『バード・ボックス』で今やこちら(US)でまで人気を博している[made it big time]Susanne Bier、そしてNicolas Winding Refnがいた。僕たちは同年代で、みんな監督や俳優、脚本家にカメラマン、と違う仕事に就いてはいるものの、僕たちは同じミッションを携えている。デンマークの歴史上初めて、僕たちには”19歳ならどうすべきか”を語る82歳の監督がいなかった。僕たちは自分達自身でそれをやっていたんだ。」

ミケルセン氏がブレイクした役は、当時無名の26歳の監督だったウィンディング・レフン氏のトリロジーの最初の1作である『Pusher』(1996)の役だった。レフン氏はその後2011年に、スムースでありながら心を掻き乱すネオ・ノワール作品である『Drive』でカンヌ映画祭にて最優秀監督賞を受賞した。『Pusher』では、ミケルセン氏はトニーという芯のない、時にコミカルなドラッグ・ディーラーの下っ端を演じ、それで彼は国のスターとなった。彼はそれからというもの新しいデンマークのアートハウス映画[小規模映画館向け映画]の常連となり、デンマークのテレビ番組でより主力の役を得るようになった。彼は、本質的にはデンマーク版の『Law & Order』と言える有名な刑事物である『Rejseholdet [Unit 1]』で他のキャストをリードした。

今でも、ミケルセン氏は役者としてのキャリアを計画したことはないと主張する。彼は体操競技選手としてキャリアを始め、10代のうちにバレエに方向転換したが、彼のダンスの志しについては友人達には話したことはなかったという。「僕は完全にコペンハーゲンの労働階級だった。それはまるでBilly Elliot[ビリー・エリオット; 映画。邦題『リトル・ダンサー』]の物語のようなものだった。僕は最初の数年間は僕がダンサーだってことは言わなかった。僕の両親はそれは素晴らしいことだと思ってた。だってそれは街角でぶらぶらするよりもいいことだったから。徐々に、僕は友人達に言わないといけなくなった。まぁ[I will say]、そこにはたくさんの女の子達がいて男の子達はそんなにいないということを知ったら彼らはめちゃくちゃ興味を持ったよ」。

ミケルセン氏は、演技を学ぶと決めるまでのほぼ10年間をプロのダンサーとして働いた。「僕はダンスの美学よりも演劇性により惹かれている[was more in love]と感じたんだ」と彼は言う。「僕はあちこちで小さな演劇の役をいくつか得ていて、そしてちょっとそれを試してみるべきな気がしたから、演劇学校に申し込んだんだ。僕は、デンマーク映画を変えるようなうねりの一部になることを本当に[truly]夢見ていた。だって僕たちは『Raging Bull』や『タクシー・ドライバー』のようなものを何も持ってなかったから」。

ハリウッドが2004年に声をかけてきたとき−−−プロデューサーであるJerry Bruckheimer氏が、彼の壮大な中世を舞台にした作品である『キング・アーサー』に彼をキャストしたのだが(「そこには馬がいて、剣があってさ、つまり大きな予算のものだよ」)−−−ミケルセン氏は自身の幅を広げる好機を見た。「僕はクレイジーなことがしたかった」と彼は言う。「僕はホームでは僕自身のキッチンシンクのドラマをすることができて、そしてこっちでは何かクレイジーでビッグなことをできた。それからはずっとそんな感じ。行ったり来たりピンポンする」。

ミケルセン氏の様々な国と役を行き来する能力の好例は、今月の公開作品以外にない。その作品とは、どちらも氷のような名前を持ちながら大胆に異なる2つの作品だ。スウェーデン人の監督Jonas Åkerlund氏からのキラキラしたNetflixのスリラー作品である『Polar』では、ミケルセン氏は自由自在に敵の首を切り落としながら電子音楽のベースに乗って世界中を駆け回る白髪混じりの暗殺者を演じる。『Arctic』はもっと静かで、しかしおそらくもっとハードコアな映画であり、北極近くのどこかを舞台にした胸が痛くなるサバイバル物語だ。その作品でどのシーンにも登場しているミケルセン氏は、北極圏にヘリコプターが墜落しパイロットが死亡した出自の不明な男性を演じる[*ここネタバレかも、という以前に事実と異なる可能性あります]。97分のあいだミケルセン氏は雪の地獄におり、生き延びようと凍ったツンドラを歩き、彼の髭はつららと化す。

ミケルセン氏は、自身でスタントをこなしたと主張する。その映画は当初は32日間で撮影される予定だったが、「天気のクレイジーさ」のため半分の時間で終わらせねばならず、それはつまり、キャストとクルーにとっての氷点下での過酷で厳しい日々を意味していた。「撮影の最初の1週間で、少なくとも15lb[約6.8kg]は落ちたと思う」と彼は言う。「その過程[撮影]を進めていくにしたがって、より困難になっていった。こう説明させてくれ。僕たちは、ずっととてもストイックで生き延びようと頑張ってきたその役に、あるレベルの感情的な衝撃を与えたいと思っていた部分[シーン]がいくつかあると知っていた。けど、最後には、僕の中には何も残っていなかった。肉体的に諦めたくなるその瀬戸際にいるとどんな感じか分かるよね?感情が薄皮一枚下にあるんだ。それ[撮影の終盤]はそんな感じだった」。

ミケルセン氏は、ダンスが彼に規律正しさと痛みへの高い耐性を与えてくれたと言うが、『Arctic』の最後では、彼の筋肉は耐えられなくなってきていた。彼はジャンプをしようとして怪我をした。「それはただの打ち身だった、でもそれはちゃんと治らなかった」と彼は言う。「僕たちは、23歳のときと同じようには治らないということをほんと忘れがちだ」。

浮氷から飛び降りようとしたり捻挫の治療をしていないときは、ミケルセン氏はコペンハーゲンでテニスやバスケットボールをしたり運河に沿ってサイクリングをしたりして時間を過ごす。彼は、デンマーク人は最もシックな北欧人だとは考えられていない(その栄誉はスウェーデン人のものである)けれども、彼は何を身に付けるかについては意識的だと打ち明けた。彼はシンプルさ、すっきりしたライン、クラシックなデニム、そして良いタキシードを好む。「今は男性は、自分が虚栄心が強い[vain]と認めたくないんだ」と彼は言う。「だから彼らは、カジュアルになることにおいて虚栄心がとても強い[カジュアルになろうとやたら頑張る]。僕はどうすれば最もカジュアルになるか決めるのに何時間も費やす人たちを知ってるよ」。

ミケルセン氏はカジュアル・ルックをするときですら、パリッとした[stark]ミニマリズムのようなものを好む。彼が今気に入っているのは2枚のBelstaffトラックスーツで(彼は赤と青を持っている)、彼はそれらを『ブルース・リー・スーツ[セット]』と読んでいる。

2つの映画が同時に世に出て、ミケルセン氏は今春はあちこちにいるようだが、その事実を彼は楽しんでいる[amuse]。彼は53歳にしてまた別のブレイクの瞬間を持つことになるだろうとは考えたこともなかったが、彼は「流れに任せるよ」という。

「こんなことを言うのはチープだって知ってるけど」と彼は言う。「でも、年齢はただの数字であって、僕がするのが好きなことをできるうちは、僕はスーパーハッピーなんだ。そこには絶対に何かクールな部分があって、君の年齢が何歳であろうと関係なく、それは君がいい位置について[have the balls]掴み取るのを待っているんだ」。

『Polar』はNetflixで現在配信中。『Arctic』は5月に映画館で公開予定[UK]。


マッツあれだけ流暢に説得力をもって英語喋れるのにまだ熱心に学んでるんですって。そういう積み重ねの結果なんでしょうね。頑張らないと!さぼってたらすぐ落ちるのが語学力。。(ただなんか小説のくだりとかちょっとマッツのこと馬鹿にしてる気がして嫌でした。カエシリウスの説明も間違えてたり演劇のキャリアの情報も間違ってたりでちょっと…です)

あと、スコセッシの作品として『タクシードライバー』じゃなくて『キング・オブ・コメディ』挙げてるの珍しいな、と思ったらあとで出てきてなんかホッとしました笑

マッツ北京訪問などですごく遅れてすみません。次はアルコールプロジェクト情報を。

この記事の英語はUKのお洒落サイトなせいか、ちょっとやりすぎだろというレベルに難しめの単語がふんだんに使ってありました。なんというか、、まぁいいや。でもハンニバルの形容詞にeruditeという単語使ってあるのはハマりまくってて素敵でした。eruditeは「rude(粗野)を脱した(ex)もの(ite)」という語源で「教養深い」という意味。もう絶対忘れないw